★東京都知事賞 
鋳金[修士]|Metal Casting [Master]

ねぇ、おねがい|御代 将司

ブロンズ、/石膏埋没鋳造法

Hey please. | MIYO Masashi

bronze/plaster investment mold
H170cm × W70cm × D90cm
作品写真:ねぇ、おねがい|Photo:Hey please.

『ねぇ、おねがい』

コンセプト

 今現在、ウィルスによる危機的状況は未だ改善されず、世界中の人々が不安の中生活を続けています。生活を続ける事が出来ない人も増えています。

 

ニュースサイトや報道番組では毎日感染者数が更新され、別れ際に直接お別れも言えないと言った報道を目にし、今まで普通と思っていたことは様々な人に支えられて成り立っていたことを思い知らされた私は、日本中、世界中の皆が苦しんでいる今この状況下で、私が美術、鋳造を用いて苦しんでいる人に寄り添うにはどの様な作品を制作したら良いかを考え、卒業制作での出来事を起点に制作しようと考えました。

 

卒制作品の脇に置いた雑記帳に描かれた言葉を見て、来館者がそれぞれ私の作品に対して思い思いに感じ、反応して頂けた経験は自分にとって今まで”こういう作品が作りたい”という動機だけで制作してきた自分にはなかった新しい制作の動機を生み出し、今回の制作に繋がっています。

 

私は修了作品を鑑賞してくれる人に少しでも肩の荷が下りるような気持ちになってもらいたいと考え、現代に生きる我々にとって、最も身近で、私たちの心を癒す存在であるペットをモチーフにしてどこかに祈りを届けるような像を制作したいと考えました。

 

具体的なモチーフ選定には、自分自身が飼育していたフェレットを選びました。現代に生きる我々にとって最も身近で心を癒す存在であるペットは言葉を発することはなくてもいつも私たちに寄り添ってくれます。そんな彼らの姿に今苦しんでいる人たちの姿が重なります。また自分でも知らず知らずの間に作品に込めた思いが広がり伝わっていく卒制での経験が自分には初詣や法事などで沢山の人々が神仏に一斉に祈る様子と重なって見えました。祈りのポーズには、大変な状況を生きる私たちが、見ているだけで祈っている時の安心感の様な、気持ちを落ち着かせる様な、亡くなった大事な人を思い出す様な力を込めています。

 

私は、自分の作品が、少しでも苦しい状況にいる人たちの思いに寄り添ったり、私たちが同じ時間を生き、繋がり、共有しながら生きていることを、少しでも感じてもらいたいと思っています。