★杜賞 
先端芸術表現[修士]|Inter-Media Art [Master]

東亜の聖母|田口 薫

パネルにアクリル

Maria of East Asia | TAGUCHI Kaoru

acrylic on panel
H162cm × W162cm × D3.5cm
作品写真:東亜の聖母|Photo:Maria of East Asia




私の家系は祖父母の代からキリスト教徒である。幼い頃に幼児洗礼を受け、カトリックのイコンは生活の中で非常に身近なものだった。そのため経験上触れてきた多くの「絵画」はカトリックの宗教画であり、現在においても絵画を描く上で宗教画に由来する透視図法の影響を大きく受けている。日本でキリスト教美術を日常生活の一部として受け入れている状態に違和感を感じつつも、16-17世紀に伝わったキリスト教が、禁教の歴史を経てもなぜ現在において受け入れられているのか、そこに非常に惹きつけられた。日本がはじめて西欧の宗教と本格的に対峙した時代に、現地民はいかにしてその信仰を受け入れたのだろうか。また、キリスト教側はどのようにして信者を獲得していったのだろうか。そこには植民地支配における抑圧/非抑圧の関係があったのか、もしくは違った方法で布教したのだろうか。

 

《東亜の聖母》は、物質的には直接交わることのない様々な事物を一枚の平面空間に組み合わせることによって、平面における新たな空間の在り方を模索し、日本とキリスト教の距離について考察を試みた作品である。

 当時のキリスト教徒がどのような風景を祈っていたのかを想像して描くこと、それは私の出生の運命を辿る旅のようなものになった。