先端芸術表現[学部]|Inter-Media Art [Bachelor]

.|黒目 天麗沙(mefohja)

写真, 刺繍

. | KUROME Teresa(mefohja)

photography, embroidery
H29.7 x16点 (全体2段 H59.4)cm × W42 x16点 (全体8列 W336)cm × D3cm
作品写真:.|Photo:.

What is the 「 . 」 ??

Xジェンダーの刺繍

人間の場合、妊娠してから3,4ヶ月までは両性具有であり、男か女かの完全なセクシュアルは、イメージの間にしか自分を持ち得ない。我々生物には、無数の性のグラデーションがあり、絶えず混じり合いながら運動している。性を決めるのは混合比率でしかなく、人間は社会や道徳によって性を二極化し固定化している。

輪廻の写真

過去が未来を彷彿させる。世界各地で捉えたイメージを再構築し、新しい宇宙をつくった。地球は宇宙であり、自分も宇宙である。宇宙はイメージの連続である。

夢遊病の日記

生まれた時に会ったきりの叔母が亡くなってから、不思議な出来事が起こるようになった。異世界からのコンタクトだったのか、自分が神隠しにあったような体験だった。感覚を通して、確かにそこに存在するものがある。

past works

new realism

デジタル時代の歪んだ「現実」の認識を表現しようとした。現像したフィルムの写真をプリントし、スキャナで読み込む際に手でブレさせ歪みを施すというアナログの手法を用いた。二つの別の場所が無理やりに繋げられ、地球の裏側と表側が、次元を超えて一つの画面に収まっている。


2019 photography, paint

東京crossing

偶然、東京とそれ以外の都市のイメージが重なりあって現像された。一年前の今と、一年後の今。そこに写る世界は、どこでもない記憶の中にだけ存在する。混沌とした頭の中のコラージュ。


2019 photography

Liberation from the Body

身体からの解放。


2019 photography

archive = disappear

「そんなの誰かの想像上の産物だ。恥まで貪りだし、引き出す。私の魂も心も食い尽くす。未来は現在に混ざり、流れ着いた。奴らは知ろうとしない。」

ソーシャルメディアを代表とする記録メディアが発達し、人々の記憶の保存方法や記録場所が多様化した。携帯電話のカメラやアプリを用いて、容易に写真や他者とのやりとりを保存できるようになった。クラウド上に保存された私たちの日常の記録はもはやブラックホールに飲み込まれるかのようにして、私たちの中からは消え失せていく。現代に生きる5 人の役者が語っているのは、私の実際の日記から引用した文章である。白い部屋= 現代 /黒い砂浜= 仮想現実とし、前者ではお互い目を合わせることなく淡々と時間が過ぎていく。私たちが書き留めておいた言葉、残しておきたかった景色をみていた時の感情を、容易に後者に投げ入れて( 保存して)いく。後者ではお互いが異常に介入し乱れ合い、理想を現実と錯覚し、前者で深く絡み合うことのなかった他者たちによって、「朝の月」が砂の穴に落とされてしまう。これはアイデンティティの喪失という意味でも、現実に二度と戻れなくなるという絶望的なことでもなく、砂の穴の中の仮想現実と抽象化された(= ソーシャルメディアの) 世界に永遠に保存されるという、新しい時代のメディアに対する皮肉であり、賞賛である。そして、現代に生きる私たちは、何人もの「私」を生きていく。

「archive = disappear」をみる

2017 movie

Bird Strike

バードストライクとは、飛行機のジェットエンジンと鳥が衝突する事故のことである。時たま、言語を使って衝突してしまうことがある。感情に委ねられた言語は、何語であろうともそれに意味はない。頭の中にあるようでない、残像のように取り残されてしまった言葉たち。飛行機と空の写真、現れない鳥。コミュニケーションによる対立の先に、残ったモノたち。イタリアに滞在していたときのこと。ある朝、目が覚めるとフランス人のフラットメイトが怒っていた。彼女のなまった英語は、感情任せで全く聞き取れず、何にキレているのかさっぱりだった。言語がまるで「音が記号化され、スローモーションで飛び交ってくるモノ」のように感じられて忘れられなかった。怪我をする直前、地面に落ちるまでの間がスローモーションになる感覚に近いと思った。そしてそのとき私の頭の中に浮かんだソイツ< 言語> を再現した。


2019 photography, graphic

profile


黒目 天麗沙 [mefohja]


1997 インドネシア生まれ、広島・出雲育ち
2016 東京藝術大学美術学部先端芸術表現科 入学

○ mail
○ instagram

インドネシア人の母と日本人の父を持つハーフであることから、異なるモノ<次元・場所・言語・人格>を一つにする表現に取り組み、あらゆる境界線をなくすことを目指しながら、写真・映像・デザイン・刺繍・平面など多岐にわたる制作活動を展開している。

自然崇拝の信仰を持ち、神道や仏教、バリヒンドゥーの影響を受けた。

”mefohja”という作家名は、前世の人魚の名前。小惑星 2019okが地球に接近していた時、海を泳ぐ人魚の姿のヴィジョンが蘇り、”mefohja”と囁く声が聞こえてきた。一年前のiPhoneのメモに”メフオージャ”とあるのを見つけたが、書いた記憶は無かった。幼い頃、天水という名の湧水の前で両足を骨折し、ドルフィンクラブというスイミングスクールに通っていたことから、そう信じるようになった。

世界を旅しながら、人々の温もりと強く生きる美しさを学んだ。様々なものが溢れる現代において、本質的な「豊かさ」とは何かと、これからも問い続ける。